シマフクロウ
シマフクロウ | ||||||||||||||||||||||||
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![]() シマフクロウ Ketupa blakistoni
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保全状況評価[a 1][a 2] | ||||||||||||||||||||||||
ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ![]() ワシントン条約附属書II類
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Ketupa blakistoni (Seebohm, 1884) | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
シマフクロウ | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Blakiston's fish owl |
シマフクロウ(島梟[1]、Ketupa blakistoni)は、フクロウ目フクロウ科シマフクロウ属(ワシミミズク属に含める説もあり)に分類される鳥類。日本では北海道のみに生息し[2]、全長66~69cm、翼開長180cmに達する、日本最大のフクロウ[2]である。
分布[編集]
- K. b. blakistoni シマフクロウ
日本(北海道中部および東部)、ロシア(サハリン、千島列島南部)[3][4][5][a 3]
- K. b. doerriesi
中華人民共和国北東部、朝鮮民主主義人民共和国、ロシア南東部[4][a 3]
和名の「シマ」は北海道に分布(隔絶された地方)する事に由来する[1]。
形態[編集]
全長63-71cm[3][4]。翼開長175-190cm[3][4]。体重3.4-4.1キログラム[4]。頭部には耳介状の長くて幅広い羽毛(羽角)が伸長する[4][a 3]。尾羽は短い[a 3]。踵から趾基部にかけて(ふ蹠)は羽毛で被われるが、趾は羽毛で被われない[5]。全身の羽衣は灰褐色で、黒褐色の縦縞と細い横縞が入る[3][4][a 3]。顔を縁取る羽毛(顔盤)は小型で黒い[4]。翼は幅広い[5][a 3]。
虹彩は黄色[3][4][5][a 3]。嘴や後肢は灰黒色[4]。
分類[編集]
- Ketupa blakistoni blakistoni (Seebohm, 1884) シマフクロウ
- Ketupa blakistoni doerriesi
生態[編集]
海岸や河川、湖沼の周囲にある広葉樹林、混交林に生息する[4][5][a 3]。ペアで縄張りを形成し生活する事が多い。魚類が生息する1つの小河川を1ペアが縄張りとし、他のペアと縄張りを共有することは無い。
食性は動物食。主に魚類(アメマス、ヤマメ[2]、ウグイ、カレイ、サケなど)を食べるほか、両生類、甲殻類、他の鳥類、哺乳類(ウサギ、コウモリ、ネズミ、リスなど)なども食べる[4][a 3]。魚類は主に浅瀬で捕食する[4]。
繁殖形態は卵生。大木の樹洞や断崖の岩棚に巣を作り、2-3月に1-2個(主に2個)の卵を産む[4][a 3]。メスのみが抱卵し、抱卵期間は約35日[4][a 3]。雛は孵化してから約50日で巣立つ[a 3]。幼鳥は巣立ってから1-2年は親の縄張り内で生活し、独立する[a 3]。生後3-4年で性成熟する[a 3]。
「ヴーヴー」「ヴォー」といった鳴き声を発する[2]。
人間との関係[編集]
種小名blakistoniはトーマス・ブラキストン(Thomas Wright Blakiston)への献名で、英名と同義[1]。アイヌ語では、コタン・コㇿ・カムイ (kotan kor kamuy, コタン(村・集落)を護るカムイ) [2]などと呼ばれる(呼び方は複数ある)。
開発による生息地の破壊および針葉樹の植林、水質汚染、漁業との競合、交通事故、生息地への人間進出による繁殖の妨害などにより、かつてより生息数は激減した[4][a 3]。行動が繊細で人間活動の影響を受けやすい。餌不足で突然餓死したり、繁殖期に人間が近づくだけで繁殖を放棄したりする場合がある[2]。
日本では1971年に国の天然記念物[a 4]、1993年に種の保存法施行に伴い国内希少野生動植物種に指定されている[a 3][a 5]。 また1980年代から巣箱の設置、冬季の生け簀による給餌、生息地を保護区や保護林に指定するなどの保護対策が進められている[4][a 3]。フェンスを設けて飛行高度を上げるように仕向け、交通事故を避けさせる取り組みも行われている[2]。環境省釧路湿原野生生物保護センターでは、傷病個体の治療と野生復帰を行っている[6]。
繁殖成功数は増加しているものの、生息地の多くが消失しているため生息数は上昇傾向にはない[4][a 3]とされてきたが、環境省調査による推定では、北海道内の生息数は一時の100羽程度から165羽(2018年時点)へ増えた[7][6]。
- K. b. blakistoni シマフクロウ
現状では個体群が4つの生息域(知床半島、根釧地域、大雪山系、日高山系)でそれぞれ孤立している。遺伝的多様性を確保するため相互に行き来できる回廊確保が課題であると環境省の専門家は指摘している[6]。
画像[編集]
釧路市動物園の飼育個体
その他[編集]
- サッカーJリーグ、北海道コンサドーレ札幌のエンブレムは、シマフクロウをモチーフにしている。また、マスコットキャラクター、ドーレくんのモチーフもシマフクロウである。
- 北海道羅臼町の鷲の宿はチトライ川の渓流の中に自然のよどみを再現した給餌池を作り、チトライ川に生息する野生のシマフクロウが魚を捕食する様子を観察、特殊な照明でフラッシュを使用せずに撮影できる観察施設を併設している。
参考文献・出典[編集]
- ^ a b c 安部直哉『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社、2008年、186-187頁。
- ^ a b c d e f g 菅野正巳「シマフクロウの森に住む◇国内唯一の生息地、北海道へ 生息環境づくりに奔走」『日本経済新聞』朝刊2019年9月23日(文化面)2019年10月1日閲覧
- ^ a b c d e 五百沢日丸『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、文一総合出版、2004年、88頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社、2000年、100、199頁。
- ^ a b c d e 真木広造、大西敏一『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、2000年、365頁。
- ^ a b c 【なっとく科学】シマフクロウ保護軌道に/生息数100羽→165羽『読売新聞』夕刊2018年8月30日(5面)。
- ^ (お知らせ)平成30年度シマフクロウ標識調査の実施結果について環境省 北海道地方環境事務所(2018年07月10日)2019年2月26日閲覧。